2006/04/18

あの頃のぼくの話2

■映画を撮った話■

中学時代と言えば、忘れてはならないのが学園祭。
しかし、学園祭にバンド出演をしたとかの話では無い。
では何の話か?

 ある日、いつも一緒に遊んでいた友達と学園祭で映画を上映しようという話になり、写真屋の息子でサッカー部主将の明日太(あすた)と映画の企画を始めた。
まず最初に決めたのは、刑事モノであるという事。
たぶん刑事コロンボの影響だと思う。
主人公には「もさん(本名忘れた)」、脇役に柴プー(柴崎)を起用する。
タイトルは「乞食刑事もさん」。
そして次に設定とストーリーを作った。
その刑事は普段は乞食として生活をしているのだが、常人には無い恐るべき臭覚を持っており、難解な事件の時に駆り出される特捜デカである。犯人は柴プーで、犯行内容は下着ドロ。
そこから先は撮りながら考えようという、安易且ついいかげんで、いかにも中二の考えそうな最低の企画だった。
明日太の実家は写真屋さんだったのでカメラ好きの親父が持っていた8ミリで撮影することになった。
ヤツの家で現像も出来るし、編集機(カミソリで切ったりテープで貼ったりするヤツ)もある。
ロケ地は近所の通称「たぬき山」という雑木林。
撮影の裏方スタッフとして、ゴン(長谷川)とクワ(桑久保)にも声を掛けた。ゴンはレフ板と照明担当。
レフの正しい使い方なんて知らなかったのだが、とりあえずテレビとかで見ていた銀色の板を持って何かをしているアレをやってみたかったのだ。
確かアルミホイルみたいな銀紙で自作した。
クワの役目は主に雑用係。
監督と撮影は僕と明日太が交代でやった。
撮影初日、そこらのゴミ置き場で拾ったトレンチコートをもさんに着せ、雑木林の適当な場所にゴザを敷いて寝ているカットから始まった。
シロウトの僕と明日太が、シロウトの中学生俳優に演技指導をする。
「違うんだよ、乞食が朝起きるときの表情はもっと酸っぱい顔するんだ!」と、わけの分からない注文をつける。
それにキチンと応じるもさん。
柴プーは普段は目立たない存在。というより虐められていたので、ここぞとばかりにサムい程の怪演を観せた。
クワの役目は撮影中の交通規制。
たぬき山の林道を自転車で通る地元のおばさんや、下校中の生徒に「すんません!撮影中ですから!」と声を張り上げていた。
いま思えば近所迷惑な話だ。
撮影は必死に三日間ほど行い、無事に撮りあげた。
あのスタッフ全員のモチベーションはどこから来ていたのだろう?

しかし編集が面倒臭くなり(フィルムを切ったり貼ったりするのが)結局のところ学園祭には間に合わなかった。
あの時代にFinal Cut ProやiMovieがあれば、ちゃんと最後までやり遂げただろうに。その幻の処女作が明日太の実家に今でも在るという事を昨年知った。
その明日太、今では大変立派な陶芸家になっている。

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