2007/07/21

東順永の水餃子

15年ほど前、俺のオフィスは新宿三丁目のシャビーなマンションビルに在った。
フィリピン女性のタコ部屋と某活動団体の根城というナイスな隣人に挟まれたロケーションで、夜中になるといつも悲鳴や怒鳴り声が聞こえていた。
荻窪から新宿のその場所に越した初日に「事件」は起きた。
濡れ衣というか人違いで桜田門から突然ガサ入れをくらったのだ。
その日の朝、越したばかりで来客の予定も無いのに玄関のドアを叩く音がした。
それも不躾な叩き方というか、ぶっきらぼうな感じだった。
玄関を開けるとそこには捜査令状を持った刑事らしき人物が立っており、その後ろには数名の私服警官が立っていた。
安いドラマでよく見る光景だけに冗談かと思ったら、なんとかかんとか言われ俺の事務所の中を家宅捜索し始めたのだ。
なんだかよく分からずお茶でも出そうかと思ったら「動かないで下さい」と言われた。
前の住人が何かやらかしたらしいのだが、その刑事に何を言っても「あー分かった分かった」と取りつく島も無い。
銀行の通帳を見せろだとか、機材(当時は音楽の仕事をやっていたのでスタジオ機材)を見て訝しげな顔をしてみせたりとそれは気分の悪い時間だった。
この話にはオチがあるのだが、書くのが面倒なので気になる人はお会いした際に聞いて下さい。
で、その新宿三丁目の事務所の裏に当時、一軒の「鰻屋」があった。
ありがちな中途半端な日本家屋風な作りの店内だ。
ここの大将は相撲好きで場所中は鰻を焼くのもそっちのけでテレビに食いついていた。
とくに若/貴(当時は若花田/貴花田)の大ファンであり、なんとその大将、二人が勝ったら「うな丼100円!」というイベントを始めてしまったのだ。
場所中、来る日も来る日も彼等は勝ち続けた。
強かった。
しかし強すぎた。
江戸っ子の大将はイベントを止めない。
負のスパイラルが続き、何場所目だったかその鰻屋は潰れた。
近所の常連客からは惜しむ声が聞こえた。
あの大将は漢(おとこ)だった。

それから暫くして同じ場所に居抜きで「東順永」という中華料理店がオープンした。
これが表題の件である。
オープン初日、スタッフを連れて晩飯を食べに行った。
店に入ってビックリ!
なんと内装はそのままで柱を赤く塗っただけの装飾で見事に中華料理店に変貌していた。
中国人でマネージャー兼料理長の劉さんに「何が美味いの?」と聞くと「水餃子美味シイヨ!」と言うので注文してみた。
これがビックリするほど美味かった。
当時これほど美味い餃子は食った事がなかった。
それがコレである。

皮は肉厚、口の中で肉汁がジュワッと出てくる。
冷凍された餃子をお土産で持ち帰る事も出来る。
当時、冷凍のを持ち帰れるようにしたらどうだ?と示唆したのはこの俺だ。
二年程前に二丁目の方にもう一軒店を出したようで、劉さんは現在そっちに居る。
餃子以外でも何を頼んでも美味い。
このジャガイモの冷菜も美味い。

そしてリーズナブルなので中華が食べたくなった時にググって一度は訪れてみて欲しい。

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